❅·̩͙61 ページ21
久しぶりに聞くこの音。
寄せては返す波は
今日は穏やかだった。
細くて今にも消えてしまいそうな月が海面に浮かんでる。
目｢あそこ、座ってたよね｣
渡辺と初めて会ったのも
目黒と2人で話したのもここだ。
海は色んな出会いを連れてくる。
行こ、と手を引かれて桟橋の1番先へ。
座った目黒が隣をとんとん叩く。
座って足を放り出したら、思ったよりも波が迫ってきて
慌てて2人で靴と靴下を脱いだ。
しばらく何も言わず、ただ夜空と海を見ていた。
♪〜 ためぐち きいてたぼく
隣から聞こえた低い歌声に自然と視線が吸い寄せられる。
彼と全然違うけど、彼よりも重みがあるように感じた。
一瞬だけこっちを見て、体の横に置いた左手が重なって
そしてまた続きを歌い出す。
彼の声が化粧水のように浸透していくものだとしたら
目黒は全てを包み込むような優しさと安心感のある声。
全てを委ねたくなるような、そんな感じ。
1番を歌い終わったところで歌が途切れた。
｢私さ、｣
気づいたら口に出していた。
どうせ引かれてるんだ。
嫌な言い方して不快にさせたし。
この際もう、何でもいい。
｢前に言ったでしょ。両親がどこに居るのか｣
『…うん』
首をこくんと落とした目黒に告げる。
何重にも鎖をかけて、南京錠をかけていたこの秘密を。
｢……ころされちゃったんだよね｣
『………………え、？』
帰ってこなかった。
何周時計の針が回ろうとも、
どれだけ外が闇に包まれていこうとも
2人とも帰ってこなかった。
お腹が空いて、怖くて、寂しくて。
鳴った電話に飛びついて話しかければ
父の秘書が今からそっちに行くと。
彼女の顔が憔悴していて
それで何かあったんだと幼心に察した。
連れていかれたのは、
目｢もういい、｣
｢病院でさ。2人並んで寝てて、警察とか医者が、｣
目｢もういいから！｣
力強い声が私を引き寄せた。
背中に回った腕と
くっついた胸板が温かい。
10年前私が渇望した人の温もりを、今更与えられるなんて。
目｢話してくれてありがとう。それと、俺らと出会うまで
生きることをやめないでくれてありがとう｣
低い声が耳元に響いた。
じんわり染み渡っていくその｢ありがとう｣は
月光の優しさに似ていて
枯れたと思っていた涙が1粒だけ、滑り落ちた。
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カジャ(プロフ) - りんごさん» ご愛読ありがとうございます。なかなか進みませんね…精一杯の勇気を振り絞ってあれだったようです笑 楽しんでいただけているなら嬉しいです。 (5月2日 20時) (
レス) @page36 id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - お疲れ様です！くっつかへんのか〜ぃの前に、ハグだけか〜ぃ！って海のとこで叫びましたꉂ🤣ワクワクしながら待ってマス！ (5月2日 20時) (レス) @page41 id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - すれ違ったふたりが戻ってきて安心しましたーヽ(；▽；)ノ空気感、好きです♡ (4月29日 22時) (レス) @page36 id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - りんごさん» 大変申し訳ありません、ご指摘感謝致します。 (4月12日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - カジャ様、ワクワクしながら拝見してます⋆♡もしかしてですが、45と48が抜けております。 (4月12日 13時) (レス) id: ba11269092 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2024年4月11日 19時
